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「……ばとらー?」

幼子の声。
扉の僅かな隙間から覗く瑠璃色の目。

「えっとね。遊びたかったの!」

『てにをは』が抜け落ちた拙い喋り方。
それでも彼女にとっては精一杯の意思疎通。
その証拠に彼女の瞳はキラキラと輝いている。

「此処には来ないように言っておいたはずですが、お嬢様?」
「だって、遊びたかったの~!!」

駄々をこねる少女。
苦笑する男。
たわいもない平和な光景。
自分とそう大して歳も変わらないであろう少女が
何故だかどうしようもなく憎たらしく思えた。

何故、あいつは笑っている?
何故、あいつは幸福なんだ?
私はこんなにも不幸なのに!
何故!?


気が付くと、私はその子供の胸倉を掴み、押し倒していた。
名前も知らないその子は、目を丸くして私を見つめている。
分かっている。
こんな事をしたって、何にもならないって。
こんなのは唯の嫉妬で八つ当たりだって事くらい。
でも、こうでもしないとやり切れなかった。
あれ以上、二人を見ていられなかった。
……堪えられなかった。


私の頭上でカチリと音がした。
同時にひりひりとした殺意が降ってくる。

「その方に手を出してみろ。ただでは済まさない」

その言葉を聞き、私は歓喜した。
どうやら、この子供は男にとって特別な存在らしい。
この子供を失った時、男はどんな顔をするだろう?
私の時のように喪失感にうちひしがれるだろうか?
それとも怒りに震えるだろうか?
どちらにせよ、この子供の喪失が男に何らかの損害を与えることは明白だった。
今まで持ちうることの出来なかった、この男を確実に貶る方法。
おそらくは唯一のそれを、私は得ることに成功していた。

私の目の前には白くて細い首がある。
この銀髪の少女の命が私の手の中にある。
ほんの少し力を込めれば私の復讐は遂げられる。
それと同時に私のマフィアの女としての矜持は保たれる。
そう。こいつを殺せば……。

「ねぇ。あそぼ?」

屈託のない笑顔を浮かべた少女の言葉に私の手は止まってしまっていた。
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